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お母さんが好きなものはなあに? 倖田三山・文
ママは何がおいしい?
外は真っ赤な夕焼けです。広いガラス窓の向こうは、キラキラの海。白いボートが、島の間を走って行きました。キッチンのテーブルで、ママがスマホを見ています。
子供部屋から出てきたサアちゃんが、ママの後ろから抱きついて言いました。「ママの美味しいものってなあに?」ママは、どうしてそんなことを聞くんだろうと思ったので「どうして?」と、スマホを置いて聞きました。朝ちゃんは、笑いながら「宿題。先生がね、お家の人と話してから書きなさいって。」と答えました。
ママは。横に来たサアちゃんの背中に手を回して、抱っこするように自分に寄せて、おでことおでこをくっつけました。「(素敵な君、お熱はないわね。)」とママは思いました。サアちゃんは「ママって、おっぱいの匂い。良い匂い。」と言いました。二人は、お互いの目を見ながら「うふふ。」「うふふ。」と笑いました。
大きなぶどう
「そうね。ちょっと待っててね。」サアちゃんを、ママの向かい側の椅子に座らせてから、冷蔵庫を開けました。それから「うふふ。」と笑って、「サアちゃんと、二人で味見しよ。」と言いました。
タッパーを開けると、ちょっと透明な感じの黄緑色で、今まで食べたことが無いくらいの大きな粒のブドウがありました。「わあ、すごい。」「そうよ。ご飯の後で、みんなで食べるの。」
「じゃあ、それまで待つ。」と真顔で言いました。
ママがにっこり言いました。「料理って、味見をするでしょ。おいしいかな、どれどれって。」サアちゃんは、「うん。」とうなづいたものの、「でも。みんなで食べるんだし。」と考えながらママを見ています。
一つを半分ずつ
「あっ、分かった。どちらもあるんだ。食べ物は味を調べておいてもいいんだ。」
「じゃあ、サアちゃんと私、一つを半分ずつ。はい。」
深い緑色のきれいな切り口に種が並んでいました。指でちょんと触れて、ちょこっとペロ。「あまーい!」
家族
「ねえ、パパ。大きな大きなマスカット、好き?」ママが、パパにそっとウインクしました。すると、パパは、「ああ、大好き。滅多に食べられないけど。色がいい。形がいい。匂いがいい。秋だなあと感じる。甘い甘い、ああ、美味しいって。みんなで食べられると、最高だね。」「うふふ。うふふ。」サアちゃんは、もう、嬉しくて笑ってしまいました。
おやすみ、サアちゃん
ママのベッドで、サアちゃんが言いました。「美味しいものが分かった。」
「なあに?」「それは、甘くてみんなで食べるもの。」
ママは、「(子供っていいな。)」と思いながら言いました。「スイカ。マスカット。それから、・・」サアちゃんが続けます。「アイスクリーム。ケーキ、チョコレート、うーん、そ・れ・から・むにゃむにゃ。」
ママ「あら、眠っちゃった。いい夢見るのよ。明日はまた、美味しいものを分かち合って食べましょうね。今度は、お野菜の美味しさも、分かるといいね。」
ピンクの生地に、お花がいっぱいの可愛いパジャマ。ママは、そっとお布団を肩まで掛けてやりました。
(ぶどうの写真は、PixabayのBru-nOさん)